【Zick Zack_Rammstein】ジグザクと切り裂かれて行くものは、果たして…

Rammstein

ジグザクに切り刻むギターリフであなたが切り刻まれるものは何か?

音楽に限らず、太古の昔から芸術という物には様々な物が込められてきました。大自然や神を称える気持ち、生きる喜び、愛の叫び、そして社会へ向けた風刺の目。

このRammsteinというバンドも然り。いや、然りと言って良いのかも解らない。彼らは時に過激なモチーフを基にして楽曲を作成して来たけれど、それは「常にそこに在る物事として」表現しているに留まり、それについての良し悪しについては言及しない、というスタイルに思えます。

この曲のMVからも漂う「ナニモノか」もまた然り。ただそこにある現実が描かれている。

RammsteinのZick Zack。今回のMVもまた、実に意味あり気な仕上がりにしつつ、正に「ジグザグ」と切り刻むギターリフの旨味と楽曲の世界観を増幅することも抜かりなく。

心地よい音楽を耳から摂取し、好ましくない現実を目から摂取する。

そして脳で処理される思考の中で、あなたはどんなものを見出すだろうか?彼らにジグザクと切り裂かれたのは、果たして…?

兎にも角にも、楽曲として美味しいことが大前提

ラムシュタインレベルになって来ると、トータルのエンタメ力が半端なさすぎる。楽曲が先か?MVが先か?込められたメッセージが先か?どれも素晴らしいけれども、やっぱり耳に届く音を美味しく味わうことから始めたい。

激しいというよりはどこか不気味に響き渡るリフ。リンデマンのバリトンヴォイスの心地よい低音が不気味さを助長していく。ゆっくりと展開して行きながら、ちょっとしたブレイク、差し込まれるキーボードの電子音、じわりじわりとにじり寄ってくるような「何とも言えない不気味さ」。

そしてサビに到達すると雰囲気は一点。先ほどまでの不気味さは一点、爽快さまで感じるような歌えるメロディが顔を出す。歌声も低音はややなりを潜め、伸びやかに広がるような世界を演出。ラスト付近ではオープニングにも見せたコール部分が唄われて、盛り上がりも見せてくれる。

ラムシュタインと言えばやはりメインデッシュはリフ。終始鳴り続けるリフは出汁の効いた味わい深いもの。実際に弾いて見ると、音やノリ感も心地よく、バックでずっと流し続けたくなるような美味しいリフ。

楽曲を聴けば、リフが美味しく、明暗のシーン展開が気持ちの良い楽曲…なのだが…

切り刻まれて行く、現代を生きる人々や社会の「外向けの仮面」

MVから直接的に見て取れるのは、いつまでも美しく在ろうとする姿。そうしたことへの執着。そしてそれが不可能であることの現実。そのために支払われる代償、解っていてもそう在らざるを得ない現実の醜さ、滑稽さと残酷さ。

外見だけの美しさなんて求めたって仕方が無いよ。素敵な歳の取り方ってものがあるよ。ありのーままのー♬なんて言葉が叫ばれて久しい。けれども、外見を美しく保てるのであれば、それに越したことはないと思うのが人間でしょう?

さらに言えば、見渡せば「ちょっと出て来た白髪は染めるのが常識」となっている。みんながみんな若々しい。白髪が混じるのは生物として自然な現象だけれども、普通染めるでしょ?染めない方がおかしいでしょ?という「まるでそれがルールのような社会的な抑圧」の出来上がり。

もうお分かりの通り。表面上は「美や若さへの執着」が映像として描かれているけれど、それは社会全般に向けられたものである、と思わざるを得ない。

世の中がみんな、実現出来ないキレイゴトに縛られるしかない現実に生きている。

よく解らない社会正義によって世間に制裁されるという形をとった「炎上」という現象。社会正義に燃え上がる者達と、その社会正義に「?」を感じつつも、黙して眺める以外に関与方法がない者達。

平和を保つために、抑止力のために持たなければいけない武力。多額の資本が軍事に費やされて行く一方で、明日の生活さえままならない「人間」は星の数ほど居る現実。

各種マイノリティは尊重すべきだ!という「圧倒的に正しい考え」に賛同出来ない人々は、マイノリティとして吊るしあげられていく矛盾。

世界は正しく在らねばならない。そうでなければ億を超える意思と思考が共存する社会なんて実現出来ない。けれど、絶対の正しさなんて無い、と誰もが解っている。

何が良いとか、悪いとかではない。全部ひっくるめて、このまま進んでいくしかない厳しい現実。

苦しい…実に苦しいですね。じゃあこうすれば良いじゃん!という誰かの名案を通せば、他の誰かが苦しむだけという…何も考えず、周囲に適合して、それなりに生きて行くのが一番無難なのでしょうけれども。陰キャに限ってそういうのが一番苦手なんよなぁ…

あれ?音楽の話をしていたんじゃなかったっけ?

【Rammsteinの記事はこちら】

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