【虚無の声_人間椅子】この世は空であるならば…気楽に生きて良いんじゃないっすか?

人間椅子

コンパクトにパッケージされた人間椅子入門曲

人間椅子。1990年代に結成された大ベテランバンド。バンド名からも解るように、江戸川乱歩をはじめとした文学的な詩や世界観を中心として、ブラックサバスリスペクトなドゥームで重い正統派のHR/HMサウンドを放つ。といった所が人間椅子のざっくりとしたご紹介でしょうか。

活動歴も長く、本当に様々な楽曲を創って来たこの方達ですが、非常に大きく分けるとその楽曲は幾つかに分類出来ます。

1.基本的に長尺で、独特の世界観が詰め込まれ、めくるめく展開を魅せる楽曲。深淵とかね。

2.極めてシンプルで、スラッシーに駆け抜けて行く痛快な曲。地獄シリーズとかね。

3.人間椅子らしさが詰め込まれつつも、コンパクトにまとまって誰でも聴きやすい曲。

この『虚無の声』は3.にあたるのではないかと思うのです。約6分と決して短くは無い楽曲ですが、しっかりと煮詰められたリフ、華麗なる場面転換、珠玉のギターソロ、と人間椅子の魅力は聴きやすい形でパッケージ。

YouTubeでバズりにバズった無情のスキャットのような大曲の魅力も素晴らしいのですが、意外とこの『虚無の声』くらいにさくっと聴ける曲も、入門編としては良いように思いますよ。

余談ですが…

個人的に人間椅子は最もライブに足を運んだバンドであります。自分が好きであることはもちろんですが、今は亡き相方と好みが完全一致したこともあって、とにかくライブに行き易かった、行く機会に恵まれまくった、というのも主因ですね。

そういった意味で、様々な思い入れが複雑に絡み合い過ぎていた事もあり、ちょっとだけここ数年は積極的に聴くことが出来なかったりもしました。曲を聴くと思い出すことが多すぎて、音楽は良いのに聴くことから遠ざかってしまう、というのは、思い入れのある曲あるあるではないでしょうか。

そろそろ、聴いてみようかな。少しずつ、リハビリするように。なんてね。

人間椅子の美味しさ全部載せ

さてさて、冒頭でもお話しました通り、この『虚無の声』は人間椅子の良さがしっかりと詰め込まれた良曲となっております。ひとつひとつ見て行きましょう。

リフの旨味がたまらない!

人間椅子の楽曲はとにかくこの一言に尽きます。リフこそ至高。リフを楽しむために楽曲がある。リフから創り、リフに併せて楽曲を構成していく、というスタイルとのこと。

ギターとベースがユニゾンでリフを奏でる場面が極めて多く、そこへドラムが加わるスリーピースの編成ですから、とにかく聴き応えのあるリフを存分に味わえるのが人間椅子。

この『虚無の声』でも、終始聴こえて来るのはリフの音。決して音としては複雑怪奇ではない、シンプルなリフではあるのだけれど、

とにかく美味しい。聴き応えがある。耳が幸せ。何に於いてもリフがカッコイイのです。

そもそも音が凄いのですよ。ベテランバンドの何が凄いって、音作りですよね。楽器や機材を知り尽くし、アンプやエフェクターを含めた全ての要素を錬金術のように使いこなし、自分達の出したい音を完璧に創り上げて行きます。

対バンのような場ではその実力が顕著に表れます。一方のバンドも素晴らしい音を聴かせてくれるのですが、その直後のセッティングで出すチェック音を聴くと、「やっぱり音の時点で違うのよな…」と唸ることになります。

曲でもなんでもない、弦を弾いて出るその一音が、もう別次元。HR/HM的に言うのであれば、最高に「凶悪な音」なのです。

ただでさえ美味しいリフのレシピを、完璧な材料と調理技術で仕上げて来るのですから。それはもう、聴き手の琴線に触れないはずもなく…

場面転換と必殺のギターソロがえぐい

もはやHR/HMという音楽ジャンルでは数ある様式美のひとつ、とも言える形として、1粒で2度美味しい場面転換ありありの構成となっております。

一般的なJ-popの楽曲でも、Aメロ、Bメロ、サビがあって、Cメロというか中間部がありますよね。多くの楽曲はこの中間部は「起承転結」の転、ちょっとした変化を付ける部分だったりしますが、HR/HMではこの転がめちゃくちゃ大きかったりします。

単純に転の部分が長かったり、それだけで一曲作れちゃうんじゃないの?くらいの規模だったり、どこまでも転を繰り返して壮大な展開になったり。

「ひとつの型にハマるとは限らないんだぞ?」という「型」であるのもHR/HMの良き所。

この曲でも、約3分が経過したあたりでこの中間部が訪れます。サビから一転、ギター音のみが響き出す瞬間に、自然と我々も「ざわ…ざわ…」と臨戦態勢を取って行きます。やべぇ展開が来るぞ、とね。

メイン部分のリフと世界観は同じくした、けれども形を変えた音でお出迎え。急停止と急発進を繰り返す展開は、キングクリムゾンを彷彿とさせます。ライブではイヤモニすらも使わない彼らが放つこの展開は、緊張感抜群ですよ。

そしてそこから繰り出されるギターソロ。ギターの奇術師_和嶋慎治の放つ音色は唯一無二。

曲によっては、更にライブに於いてはギターソロが数分間続くことも珍しくはないですが、この曲のように短くビシッと決めるソロもまた良きですよ。

妖艶な様で、ブルージィで。HRでありながら艶のある独特のサウンドは必聴です。

めくるめく歌詞は深淵なる世界

そして人間椅子と言えば、その文学的な歌詞もまた大きな魅力のひとつです。

江戸川乱歩のような文学を感じる世界。

陰鬱で鬱屈とした、ドゥームな楽曲とフィットした世界。

はたまた、生首がごろんと転ぶような、日本昔話かのような世界。

そしてこの『虚無の声』では仏教の薫りも漂う日本固有の世界を感じることが出来ます。

この曲の歌詞は、「地下室を出てみよう、世の中を見てみよう、まっさらに」と始まって行きます。

そう、今現在地下室に居ることが前提。日の当たらない場所に居る我ら陰キャのテーマソング。

そして歌われる内容は、我ら陰キャにとっても救いの有るありがたーい内容、かもしれません。

色即是空

空即是色

五蘊皆空

諸法空相

とんでもなくざっくり言えば、この世の物は全て空っぽみたいな物。何か大事な中身があるようなものじゃあないよ?でも、それで良い、それが良い、と(有識者の方、適当でごめんなさい)。

科学という物に寄り添ったとて、どうせひとには確実に寿命が訪れるし。時が経てば、太陽が大爆発して一帯の星ごとふっとんじゃうんでしょ?

絶えず流れて、拡散して、集束して、色を変えて行く中での「ほんの幕間」でしかないのなら。人生なんて、何だって良いんじゃないですかね。

飯食って、音楽聴いて、昼寝して、ぐーたら生きて行けば、良いんじゃないですかね。どうせ地球は回るんだもの。

【人間椅子についての記事はこちら】

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