外観がやばいバンドは音楽もやばい、ということを忘れてはならない
BAND-MAIDという名前。
MVでのご覧の通りの外見。
YouTubeについている海外コメントの嵐。
かつての私は、「あー、そういうことね」と早合点してしまっておりました。
可愛らしい女の子の出で立ちで。
ジャパニーズメイドサン！
サブカル感たっぷりで、まるでアイドルのようにちやほやされているんじゃないのか？と。
そんな浅はかな想いを持っていた過去の自分、何とも愚かでした。確かに「そういう」需要もあることは事実だろうけども。やっている音楽をちゃんと聴いてみれば、納得の出来。しっかりとロック。そしてメタル。
居るぞ…このバンドの中に、ガチのロック系音楽家が居るぞ…ということに気が付きます。
メタルが好きな人ほど、ぱっと見で「メタルの音そのもの以外の部分での特徴が大きい」こうしたバンドに苦手意識を持ってしまうのではないだろうか。私がそうでした。
メタルこそ、見た目がやばい奴らばっかりなのにな。そんな奴らこそ、音楽も最高だということを、知っていたのに。外観だけで色眼鏡で見られることに、悔しい想いを持っていたのに。まだまだ未熟でした。
ヘヴィメタルの楽曲として本気でお勧めしたい、BAND-MAIDのThrill。なんて、もはや世界的にも認知を得て活躍している彼女達。私がおすすめしたい、なんて言うのはおこがましい限りですけれどね。
「音楽的変態」の巧みな犯行
私の幸運は、「音として」BAND-MAIDと出会えたことでしょう。外観や世界観から詳しく知ってしまったら、最後まで色眼鏡で見てしまっていただろうなぁ、と思う。
決して批判的な意味ではなく個人の好みとしてなんですが、コスチュームや外見の特徴づけはちょっと苦手です(笑)。シンプルに中年が、「好きな音楽」としてこの容姿の方々をリアルで挙げることに…抵抗はありますよ、正直ね。そこは勘弁していただきたい。
アーティストの活動としては、ジャパニーズMAID！AKIBA！みたいな外観とゴリゴリの音のギャップが魅力の一つであり、世の中に対しての「掴み」として機能しているのでしょうが、そんなギャップがなくとも、ホントに音楽として面白いですよ。
ひとえに、ギタリストのKANAMIが変態なんだと思うのです…(音楽的な誉め言葉)
バンドの方向性自体は常に新しい物を探すような流れで、近年の楽曲はまた大分路線が違う。好みは人それぞれで、自分的にはこの頃のハードロック路線が実に好みですねぇ。
とはいえどの時期であったとしても、作曲担当のKANAMIの音楽ステータスの高さが垣間見えるのですよ。平坦でありがちでワンパターンになってしまうような、「あーはいはい、よく演るいつものそういう曲だよね？」ってものが無い。
毎回毎回、アルバムを出す度に「今までとは一歩進んだ違う物を創るんだ」という意気込みをビシビシと感じます。これは前回やったんだから、次はこれをやろう、という姿勢。
最近は音楽理論やら技術やらも発達して、その辺の量産されているような楽曲でも、本当に聴き心地の良い平均点の高い音楽がボンボン作られていきますからね。失礼な話、この外見と世界観でバンドを組んでいれば、そんな量産音楽でもやっていれば売れるんだろう？なんて思ってしまう。
けれど、彼女らはちゃんと個性を持った変態音楽を繰り広げているところが面白いのです。
このThrillはこの路線でスタートした当初、と言っても良い時期の楽曲で、色々な部分に粗削りさが見えるところが逆に魅力的。
意図してか否かは分からないけれど、このThrillは音数を少なくして「音の余白」をしっかり持たせた楽曲になっている気がするんです。
こういうロックは実に味わい深くて好きなんですよ。よく言われるけれど、引き算の美学っていうかね。聴くべきところをしっかり聴ける構成、と言いますか。
もしかしたら、この頃は(今現在と比べれば)メンバーの演奏スキルが不足気味だったからこそ、直球な音楽が作れたのかな？なんて思ったりもします。
バンドを牽引するのはやはり歌声
そしてこのバンドの大きな個性と魅力の一つが、ヴォーカルのSAIKIでしょう。この方の歌声がなければ、この世界観は完結していなかったと思いますね。いやもちろん、バンドという体制である以上、全てのパートが不可欠な存在であることは大前提ですが…
昨今、アイドルみたいな「可愛い女の子」路線の歌い手は、当然たくさんいるわけです。
不良っぽさとかギャルっぽさを押し出すタイプもあちこちにおります。
ハスキーな歌声で「姉御感」たっぷりの女性ヴォーカルも多いですよね。
とんでもない歌唱力と高音やロングトーンを武器にするガチ勢も居らっしゃる。
アーティスティックで神秘的な雰囲気で独自の世界観を創り出す歌い手さんも居る。
けれどこのSAIKIの歌声や姿勢は、どのタイプにもあてはまらない、ありそうで無かった路線だと思うんです。
特徴的な何かをアイコンや武器にしたり、卓越した歌唱技術を駆使するというよりも、素直に真っすぐ唄うような雰囲気。憧れてやまない音楽性というよりも、素人でも頑張ればカラオケとかでも真似して唄うことは出来るような、クセのない歌唱スタイル。
そう、ダンスよりも歌声で覇権を握り出した頃の安室奈美恵の雰囲気。
容姿や雰囲気としても、可愛いメイドさ～んと一線を画したクール系。様々な狙いの下に出来上がった編成なのか、結果として集まったチームなのか。
いずれにしても、アイコンとして機能する絵に描いたようなメイドさん、ガチ楽曲を創り出せる音楽変態、一転してクールで真っすぐなヴォーカル。俯瞰して見ると、これまたよく出来た構成になっているのですねぇ。面白いものです。
コメント