【We Don’t Need Another Hero_Ghost】 「陽」から「陰」への華麗なる配列変換

Ghost

IRON MAIDENの次はティナ・ターナー!

GhostがIron Maidenの1stからのcoverを発表したぞ!と心躍っていたのも束の間、矢継ぎ早に発表されたcoverの中身は、なんとティナ・ターナー!マジか?そこも行くのか!?と驚きを隠せません。

当然にして、その出来は素晴らしいものなのが恐ろしいところです。まぁ確かに、さらっとビートルズやペットショップボーイズをcoverして来たわけですし、そう考えるとティナ・ターナーというのも…ちょっと納得のチョイスではあります。

原曲は1985年公開の映画、マッドマックス/サンダードームの主題歌。サビの部分は「あ、聴いた事ある!」という方も多いのではないでしょうか。

原曲はどちらかとPOPで優しい雰囲気。当時の80年代の雰囲気をこれでもか!と感じる良い音像。音質の問題もあるのでしょうが、「あの頃の雰囲気」が良く現れています。中年のノスタルジーと言われてしまえばそれまでですが…

そして、映画の主題歌ということもあって、マッドマックスの物語の中で未来や希望を見出して行くような、「陽」のオーラをたっぷり纏った楽曲となっておりますね。クライマックスには少年少女のコーラスも合流して、実に輝かしいキラキラした印象すら与えて来ます。

さぁ、この楽曲をGhostがどう料理してくるのか…

ちなみに原曲はこちら

もはやお馴染みの職人芸!Ghostのcoverと言えばこれよ!

まず耳に飛び込んで来るのはガッツリと歪んた音。全編を通してリフのように作用してくるこの音が、何とも心地よいこと心地よいこと。

あらためて原曲を聴いて見ると、当然のことながらに確かに流れているこの音。歌声を主役に据えた原曲では、これらの音はいわゆる伴奏のような役割になっていて、何気なく聴いていると意識が向くのはやはり歌声の方。バックの音はあくまでもサポート的な立ち位置ですよね。

これがGhostの粉をひとふり掛ければこの通り。この歪んだ音は確実にメインデッシュのひとつ。まるでGhostが「どうだお前達、この曲のここの音、こんなに美味しいんだぞ?」と教えてくれているかのよう。

そしていつもの如く、ベースが上手い具合に暴れ回っております。

個人的な好みかもしれませんが、Ghostのベース音はホントに好き。縁の下でこっそりと支え続けるだけには留まらず、かといって決して主張し過ぎることもなく。Ghostの楽曲に仕込まれた「陰」の気配を演出するのにも欠かせません。

原曲が80年代の楽曲ですから、その雰囲気をしっかりと保ちつつ、スタジアムロック感を存分に薫らせながらも最先端な音像、というのもいつものやり口。

サビはぐっと盛り上がるし、とてもキャッチーで、楽曲全体の方向性も確かにヒロイックで希望を感じさせるもの…ではあります。間奏部のギターの舞い上がるような音も、実に原曲のポテンシャルをそのままに残していると言えるでしょう。

けれども、どこか…仄暗い。完全に近年のGhostみ全開の仕上がりです。

影のある特徴的な歌声がそうさせるのか、うねり続ける低音がそうさせるのか。どこか重く、ずっしりと、湿り気のあるような影が忍び寄って来ます。

原曲のクライマックスの若い若いコーラスに演出された「輝くような希望」とは毛色が違う、何とも現実味の強いこの雰囲気は、マッドマックスの世界観によりマッチしているかも知れません。

そりゃマッドマックスなんだから、Ghostともマッチするよね

歌詞の方に目を向けて見れば、マッドマックスの主題歌であることが良く解りますね。

廃墟

壊れた車

何も残っていない恐怖の下で生きる

マッドマックス的な荒廃した世界が描かれています。

今の状況を越えて、抜け出した先にある「輝かしい何か」を求めて。ヒーローも帰り道も要らない、その先に進むしかない、という決意。

人生を賭けて出来ることは何か

そうして生きた証は光り輝くのか

それとも闇の中へ消えていくのか

うん、この歌Ghostの雰囲気とぴったりですやん

Ghost自身がcoverしようと決めた曲が、Ghostにぴったりである。何とも至極当然なことではありますが、終末観や近年の「陰側に寄り切らない雰囲気」とも相まって、実に良いチョイスだなぁ、と思ったわけです。

この終末観というのは、いつの日も意外と身近なものですよね。

世界の終わりだなんて、一見すると現実離れした絵空事感が強いですが、我々ひとりひとりの人間にとっては人生の終わり≒世界の終わりに等しいわけで。

そう考えるとみんな等しく、今日明日にも来るかもしれない、けれどいつか必ず来る世界の終わりに怯えながら生きているんでしょうね。

人生を賭けて何をするか

その結果は〇か×か

これが全てなのかも知れません。そして〇か×かは他の誰かが勝手に決めることであるならば、問題は「何をするか」だけなのか…そういうことなのかぁ…

【Ghostについての記事はこちら】

コメント

タイトルとURLをコピーしました