最新アルバム「色即是空」を待ちわびてキリンになりそう
待っていますよ。えぇ。首を長くして待っております。おおよそ3年に2枚程度のペースでアルバムを発表していた人間椅子としては、今回の「新譜までの期間」はやや長めと言えるでしょう。
新譜を出してくれる、次のツアーをやってくれる。そう信じては居ましたけれども、世の中は突然の感染症禍で大混乱したりした通り。何があるかは分からないものです。
推しの新譜の発表、そしてライブツアーをしてくれることほど、喜ばしいことはありません。
人間椅子と言えば、ギターの奇術師「和嶋慎治」による、技術の粋を集めたような巧みな楽曲と文学的な歌詞が大きな魅力のひとつ。そんな魅力と双璧を為すのが、「鈴木研一」によるぶっといリフで構成された正拳突きのようなストレートな楽曲ですよ。
わじーの曲を聴けば、研ちゃんの曲もまた聴きたくなるというもの。
そしてアニキの曲もね(こちらはまた次の機会に)。
今回ご紹介しますは、2023年7月時点では最新のアルバムとなる『苦楽』より、鈴木研一作曲となる『神々の行進』。公式発表のライブ映像と共にどうぞ。
ごく太のリフと、ごん太のベース音に舌鼓
兎にも角にも、イントロから聴いていただきたい。
まるで和太鼓のようなアニキのタムが響き渡る中、響き渡る超絶シンプルなリフ。
デーデーデ・デー♪デーデーデ・デー♪という、実にシンプルな音を繰り返すこのメインのリフが、どこまでも美味しい。これぞ人間椅子、これぞ鈴木研一ですよ。
そして、ギターとユニゾンでリフをなぞるこのベース音の凶悪さよ。これはもう、ライブで体感していただくしか無い部分はありますが、本当にこのお方のベース音はえぐい。マジでえぐいです。
スタジオ音源等で一般的な楽曲を聴くと、「ベース音はよく聴こえない」というのが一般的な方の感想でしょう。しかし、ことライブでのバンドサウンドとなると話は変わります。大地を揺るがすような重低音、というよりも「もはや空間の振動」となって襲い掛かるベース音の魅力は、ライブ好きな方ならばおかわり頂けるかと思います。
そしてこの人間椅子のベースは、更に凶悪なのですよ。先に述べた通り、ベース音は空間を振動させるように、内臓に響くように我々に襲い掛かります。そしてドラムのスネアやシンバルのような強烈な「打楽器音」が、こちらを殴りつけるように暴れ回ってくれるのですが…
鈴木研一のベースはもはや打楽器。ベース音で殴られた我々は内部から爆発してしまいます。
打楽器の様に、というのはご本人もコメントしておりました。三味線に於いて、バチを弦にたたきつけるように演奏する手法のように、ピックをベースの弦にたたきつけるように弾くと、人間椅子っぽい音が出ますよ、と。ご本人監修の楽譜本のコメントだったかな。
そしてこれまた有名なお話ですが、ライブ中に鈴木研一氏は頻繁にピックを客席に投げてくれます。これをキャッチ出来るラッキーな方が写真をTwitter等にあげてくれることがあったのですが、このピックはボロボロに割れて欠けているのです。ライブ中に数曲演奏しただけで、ですよ?
私はそのピックをキャッチ出来たことがないので、写真をお見せすることは出来ないのですが…本当にあり得ないくらいの「割れ方」をしているのです。
音作りはアン直が基本の彼がこれだけの凶悪な音を出せる理由は、まさかの「物理攻撃力の高さ故」という、驚きの事実がありました…
ミドルテンポで腹を満たし、ラストの疾走部で昇天せしめる
さて、そんなヘヴィネスたっぷりのこの曲でありますが、お聴きの通り基本的にはミドルテンポで重厚なノリ感を楽しむ楽曲となっております。
メインのメロディ部分を2番まで堪能した後は、お待ちかねの中間部のお出ましです。
雰囲気を変え、やや跳ねるようなリズム隊に乗せてわじーのブルージィなギターソロが鳴り響く中間部。確かに旨味の詰まった音像であり、起承転結の「転」を担う中間部を経て、再度メインのメロディパートへ。
確かに、どっしりとした低音に身を委ねて気持ちは良いのだけれども…HR/HMとして、今一つパンチが足りない、アツい音が聴きたい。そう感じたお客様はいらっしゃいませんか?
あるよ?怒涛のアツい展開を魅せてくれるラストスパート、ありますよ?
低く刻むギターとベースでゆったりと助走を掛けた後、アニキのドラムが開戦の狼煙。ミドルテンポでゆったりとノっていた我々の耳に、怒涛の疾走パートが炸裂します。
まるで往年のアイアンメイデンを想起させるような、哀愁とカッコ良さをMIXした疾走リフ。こうした展開一つ一つのためにリフが用意されているのもありがたいところ。
ここのリフがまた旨さマシマシな上に、更にギターソロが重ねられていきます。中間部であんなにも聴かせてくれたのに、ラストの展開用に加速度を増したギターソロを立て続けに披露してくれるこの贅沢さ。一曲で二度、三度と美味しい思いをさせてくれるこの構成、大好きですねぇ。
そして研ちゃんらしく、ラストの展開は助長過ぎず、短めにビシッとスパっとキメ。楽曲の最後に「じゃ~ん…」と伸ばさず、ビシッと終わりにしてくれるのもカッコ良きところです。
人間椅子の中では、曲の長さ的な意味で「大作」という部類には入らないこの曲は約5分。一般的な楽曲と同じくらいの尺の中に、二度三度と展開を魅せてくれます。繰り返しますが作曲は鈴木研一。
ギターの和嶋慎治の作曲センス/演奏技術もさることながら、そうしたいわゆる「天才」の隣に、ひと味違う切り口で、尚且つ対等なレベルの作曲が出来る鈴木研一という「猛者」が居るというこの強み。
この2人がお互いに遠慮のいらない間柄で切磋琢磨して来たのだから、そりゃあとんでもない名曲が産まれて行くわけですよ。
そして更なる三人目の「アニキ」の存在感については、また後の機会に…
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