超個人的RAGE黄金期と言えばこの楽曲
メタル大国ドイツで骨太パワーメタルを放つこと数十年。パワーメタルの権化RAGEの活動は本当に長い。当然、バンドメンバーも様々な変遷を経ているため、Rageという「芯」はガッチリと存在しつつ、その時その時で様々な様相を魅せてくれておりました。
この時期のメンバーが好き、この頃の作風が一番好み、等の意見がありましょうが、私的に一番ストライクゾーンにハマったのはこの『Down』の頃なんです。アルバムタイトルで言えば『Unity』や『Soundchaser』の頃ですね。
センスの塊、天才やカリスマと言った言葉が似合い過ぎるヴィクタースモルスキをギターに、スーパーテクニカルマッチョのマイクテラーナをドラムに配したこの当時の編成は正に神。プログレ風味を加えつつも真っすぐなパワーメタルを放っていたこの頃は、本当におススメです。
このくらいのド鉄板な楽曲になると、逆に聴く機会が少ない…いや、少ないと感じてしまうもの。新しく発売された楽曲、普段はあまり聴かない(と思っている)マイナーな楽曲等々、あれを聴くぞ!と考えて楽曲をチョイスする時は、ついつい余計なことを考えてしまいがち。
時には、超王道楽曲を真正面から楽しんでテンションを上げましょう!
最高級のパワーバランスをあなたに
You’re going down、というロックな掛け声を皮切りに、重厚感溢れるイントロで助走をキメ、圧倒的なパワーで蹂躙していくこの曲は、正にThis is パワーメタル。
この曲をはじめとするこの時期の楽曲は、とにかくパワーバランスが最高なのです。
まず、何よりも前面に現れて来るのがパワーメタルであるということ。最前線を固めるのは重厚感やヘヴィネスで身を固めたサウンド。
マイクテラーナのキックとスネアはバッコンバッコン暴れているし、ゴリゴリのベースラインの上で踊るギターはあくまでも重苦しい歪みがたっぷり。
疾走して駆け抜けて行くという雰囲気ではなく、ズシリズシリと巨人が迫るかの如く。華やかさよりも力強さで攻めて行く。正にヘヴィメタル。
…なんだけれども、耳をすませば響いて来る音は実に華やかだったりするのです。
この辺りが鬼才ヴィクターの為せる技なのでしょう。これもギターで出して行くの?と思ってしまうような音像を巧みに操り、要所要所で煌びやかな音も放り込んで来ます。
地に足の着いた、ヘヴィネスでズッシリ来る…だけではない。力強さに酔いしれつつ、芳醇な薫りまで楽しめてしまう。まるで不思議な魔法にでも掛かったかのよう。重く、激しく、華やかに、という奇跡的なバランスが生まれるのです。
更に更に、スリーピースという特性も最大限に活かされているのです。華やかなのだけれども、いたずらに音数や手数は増やさない。あくまでもスリーピースでやるんだ、という姿勢。
ギターソロに至っても、ベースとドラムでガッチリと下支えしたリズムの上でヴィクターの妖艶なギターが舞う。けれどもそこはしっかりとスリーピース。音の隙間がちゃんと設けられているのです。下手に音が飽和することなく、3つの要素がしつかりと絡み、それぞれを最大限に楽しめる。
足し算の美学と引き算の美学を同時に操り、音の旨味が積分されているかのよう。
オーケストラの作曲も出来るというヴィクターの手腕は、それはそれは凄まじいものだったのでしょうね。この神掛かった体制での初期衝動が詰まったこの時期は、正に黄金期と言えるでしょう。
You’re going down!(親指を下に向けながら)
とにかくこの曲が印象に残っているのはライブ映像。DVDとして発売されているFrom cradle to the stage(ライブパフォーマンスは百点満点!)に収録された『Down』での一幕。
楽曲が始まる前、ピーヴィはその野太い声で会場へ「You’re going down」と言いながら、親指を下へ向けて見せる。オーディエンスはもちろんその意味を解っている。あの曲が来るぞ、と。会場を煽る様にこのくだりを数回繰り返し、この重厚なイントロが始まって行くわけだ。
もうこの展開、めたくそカッコ良くて鳥肌が立つんですよ。自分もやりたい!やってみたい!
人生の中で、そんなタイミングがどれだけあったことか。
日々の生活の中で、やってられない場面が多過ぎませんか?
なんで自分ばっかりこんな目に遭うんだ。なんで自分ばっかり苦しいんだ。
なんでそんな筋の通らないことがまかり通るんだ。
毎日毎日ただ過ぎて行くだけで、一体なんの意味があるんだ。
そんな時にはこれよ。You’re going down!と親指を下に向けてやろう!
腹が立つあんちくしょうに。
納得のいかない世の中に。
しょぼくれている自分自身に。
何にも解決しませんよ?クソが!と叫んだだけでクソが消えてくれるのであれば、トイレは要らないわけです。それでも、その姿勢と、爆裂パワーを持つこの楽曲を聴けば、少なくとも自分自身にバイキルトくらいの効果は得られるわけで。
湧き上がるパワーでクソを掴み、トイレにぶち込み、水に流してしまいましょう。一瞬だけ奮起して、水に流してしまえばそれでゲームセット。何だそれだけのことかと、意外と物事なんてあっけなかったりするもんです。
必要なのは、その一瞬の爆発力。気合。胆力。それらを与えてくれるのがヘヴィメタルという物なのです。どうでしょう、是非ご家庭におひとつ、ヘヴィメタルを。
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