【Different_BAND-MAID】この曲、なんだかDifferent?

BAND-MAID

鉄板の展開から「あえて外す」という犯行

音楽をよく聴く人ならば、みんなそれぞれに趣味趣向があると思うんですよ。

こういう音が好き!

こんな展開が熱い!

こうやって進行して来たら…次はこう来るよね!

こう来て…こう来て…ここで盛り上がるこの感じ!これが好きなんだよ!みたいな。

音楽理論なんて何も解らないままでも、なんとなく鉄板のやり口、雰囲気で感じるコード進行、美味しく聴こえる音運びのようなものを感じるようになってくるもの。なんとなーく、のレベルでね。

ギターでもベースでも、ピアノとかでも。よくある指の動き、手癖、和音の出し方、みたいな物も「形」として慣れて来るんですよね。それこそパワーコードとか、ピアノの和音を弾く時の手の雰囲気とか、素人ながらにも感じて来るのですよ。

そうやって出来上がって来た「こう来たらこう来るよね!」がある時崩れると、途端に違和感に包まれてしまう。もちろんこの「崩し」は絶妙で、巧妙です。

楽曲の途中で「あぁ、もっと盛り上がって欲しかった」「ノってた所でテンポを変えられた」みたいなポイントを意図的に配置されることも多分にあるわけで。

巧みに鉄板を「外す」ことで、聴き手を翻弄してくる悪魔の音楽があるのですよ。

音楽活動として脂も乗り切って来た頃に発表された、BAND-MAIDのDifferent。実質的に楽曲を支配しているKANAMIさん…マジで(音楽的な意味での)変態ですよ。

KANAMIの手の上で踊らされているのは…我々なのか!?

ガワだけ聴けば、激しく疾走していくカッコ良い系の楽曲。なんだけれども、聴く度に色々なところが耳に引っ掛かる。いや、耳に引っ掛かるように仕向けられている、感じ。完全に術中にはまっているわけです。

イントロのサウンド。カッコイイよ?カッコいいんだけどさぁ。なんか「違和感」を感じさせられてしまう。ちょっとした音のキモチワルサみたいな物が仕込まれていて、そこがこの曲のインパクトにもなっている。まるで、パクチーのような香りの強めなハーブで味付けされているかのようで。

イントロから唄い出しに掛けての場面、そこから幾つかの場面転換を経てサビに至るまでの道のり。この辺りの展開が、まるでジェットコースター。急加速、急旋回を繰り返して、こちらはびゅんびゅんと振り回されていきます。

当然、楽曲としておかしいと感じるようなレベルまで行かない「一線」が巧みに操られていて、ジェットコースターから落ちるかどうかのギリギリのライン取りで、我々を音の遠心力の渦中に放り込んでいく…あぁ、もう完全に術中にはまっています。

そして、そこかしこでKANAMIのギターが暗躍しているわけ。メインの歌声やメロディが耳を惹く場面で、バックでメタクソに暴れ回っていたりする。このバランスが実に巧妙で、聞き流していると気付かないような構成で、「え?この王道的なメインメロの裏でそんな音出しちゃうの!?」的な犯行をちょいちょい重ねている。

幕間の展開でも、one!~♬、two!~♬、と展開したらさぁ。次は3と来て、そんで4と来て、一気に爆裂してからのどん!でしょうよ。これはちゃんと歌詞であって、カウントをしているわけではないんだけれど、どちらとも取れるような絶妙にリンクしているようで。

2までしかないの?ねぇ、3はないの?スリー!のカウントしたいじゃない!きっとオーディエンスも歌いたいじゃない!

なんでだよ!なんか…こう、すっきりしないんだよなぁ。ここぞというところでおあずけをくらったり、裏でコソコソと音を仕込まれてたり、まるで耳をくすぐられるような音を放ったり。

はっ…まさか…今…我々は焦らされているのか?

こう展開すると思った?そうはいかないよ?

こんなサウンド、気持ち良いよねぇ~、でも、今日はそうはさせないよ?

なに?一緒に盛り上がりたい?へぇ、出来るかな~?

好き勝手に焦らされ、振り回されながら。不思議な薫りと旨味につられて、ついついまた聴いてしまう悪魔的な構成。「手玉に取られる」というのは、こういうことを言うんでしょうねぇ…

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