レトロなPOP感の背後を支える骨太バンドサウンド
2023年8月、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
暑いですねぇ、めたくそに暑い。全国的に猛暑が続いております。近年の猛暑というともはや「危険な暑さ」。暑くて嫌んなっちゃうねぇ、では済まされない、日々をすり減らすように生きている方々もおられるでしょう。
そんな中、我らが命様が新曲を世に放ってくれましたよ。これでこの夏も乗り切れるという物です。ありがたや、ありがたや…
どこまでもスタイリッシュでSF感すら感じる、キャッチーでヒロイックなバンドサウンドを披露してくれた前作『Drip』とはまた一転した雰囲気を魅せてくれるこの『Dazzling Secret』。うだるような暑さのこの夏を、2023年の後半戦に挑んで行くこの季節を乗り切るための、大いなる力を与えてくれること間違いなしです。
キャッチーな疾走感、というよりはややミドルなテンポで力強さを魅せるこの曲。若干のレトロ感と言いますか、平成の世に光を見せていたJ-POPの旨味を感じるのは、私だけでしょうか。以前から楽曲に様々なテイストを織り込んで来た命様ですから、この味付けもまた意図的なものではないか?と感じてしまいます。
激しく明らかなバンドサウンドであった前作と異なり、全体の雰囲気・構成からPOPSみを漂わせる今作ですが、そこは天下のジグザグ。POPな曲だね~なんて感触に留まらず、ジグザグだからこそ、バンドだからこその旨味がたっぷりてんこ盛りであります。
冒頭から荒ぶるドラムフィル、影丸のテイスト溢れるサウンドにヨダレが出ちゃう。
お、大人しめな雰囲気で攻めて来るのかな?と油断しているところに差し込まれるこのフィルよ。激しい怒涛のサウンド!ではなくて。実にシャープに、実にクールに、要所要所でビシッとキメてくれるこのドラムフィルは、POPS寄りな曲調に差し込まれた打ち水の様。
たださえ魅力的な歌声で展開される楽曲に「締り」を与えてくれていますね。回を重ねるごとに少しずつ手を変え品を変えてキメて来るこのドラムプレイを追って行くだけでも楽しめてしまいます。
そこへリズム隊として重ねて来る龍矢のベースもまた、たまりません。中盤で跳ねるようなリズムのグルーブを感じさせてくれる一幕もまた、楽曲の聴き所のひとつでありましょう。
3分半という短めな楽曲ではあるのに、その中には細かな展開や音の修飾が重ねられ、単調な展開なんて一切無し。スタートからエンディングまで次々と新しい音を聴かせくれるこの構造は、3分半とは思えない満足感をもたらしますね。相も変わらずの妙技であります。
目も眩むようなまだ見ぬ世界が待っているのだろうか?
ジグザクのファン層というのは、どのくらいの世代なんでしょうかね?勝手に、比較的若めの世代に好まれているような気がしています。
この先、将来に、どこかへ飛び出そうとしている方々。
正に今、目指すべき場所へ向かって全力で走っている方々。
一方で私は、陰キャをこじらせた中年です。なんとなく、世の中の浅い部分はざっと見渡すことが出来たかな、という頃合い。自分の立ち位置、ポテンシャル、世の中の原理原則、たどり着ける場所の限界も、一通り実感した頃合い。
そして更に言えば、これはもう個人的なアクシデントではあるのだけれど。大事な大事なものを失って…というかひとつの終わりを見届けて。一旦メインシナリオをクリアしてしまったかのような、残りはエンドコンテンツだけかなー、なんて感じてしまいう。人生後半戦を迎えた今。
失望するにはまだ早い
こっからはじまる話だ
どうしようもなくあてもない かすかな光
Aren’t you gonna seek? Dazzling Secret
あるんですかねぇ。まだ探しちゃっても、良いんですかねぇ?
こんな歳になっても迷い、苦しみ、困難と後悔だらけ。ゆっくりと終わりに向かうだけじゃなくっても、ワンチャン輝くような瞬間を探して、期待しちゃっても、良いんですかねぇ?
命様が言うんだから、良いんじゃないでしょうか。
Seek!でもGet!でもなく、Aren’t you gonna seek?という、柔らかな物腰に。
こんなにもスタイリッシュでクールな音楽に載せられた、優しい語り掛けに。
ささやかな希望と、安心感のような温かさを感じてしまったのは、私だけでしょうか。
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